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読書レビュー ノルウェイの森

ノーベル文学賞候補として毎年名前が上がる村上春樹。名前はもちろん知っていたけど、1冊も読んだことがありませんでした。
人にオススメされたので、試しに読んでみることに。この本をオススメされた理由がイマイチわからなかったのですが、読後感は独特…

生と死は共存していて、生と性が複雑に絡み合う。

主人公のワタナベくんの揺れ動く混沌とした感情、大切な人たちの自殺に対する処理しきれない感情、悩み…

生きるとは?
死者と向かい合うには?
自分が大事にする人とは?
愛とは?
誠意とは?

人の悩みの9割は人間関係とよく聞きます。
一般的に言われる人間関係とは、◯◯さんに嫌われた、◯◯さんが気に入らない…など。
このノルウェイの森では、もっともっと深い人間関係、ワタナベくんが本当に大事にしたい人は誰なのか?、悩み揺れ動く心が綴られています。

ノルウェイの森 のあらすじ

以下ネタバレになるので、まだ知りたくない!という方は、読み終わってから下記を読んでください(^^)

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ノルウェイの森を読んで、私の感情はかなり揺さぶられました。ワタナベくんの揺れる心に揺らされたようです…
以下は私の解釈でのノルウェイの森のあらすじを記載します。私の心の中でのノルウェイの森、本書と異なる部分もあるかもしれませんが、ご容赦ください…

◇ ◇ ◇

主人公のワタナベくんは本当の友達しか作らないタイプ。
友達は1人しかいませんでした。それがキズキくん。
しかしキズキくんは高校の時に自殺してしまいます。理由は不明。自殺直前に一緒にビリヤードをしたのが、ワタナベくん。最後に話をしたのもワタナベくんになります。

キズキくんには直子さんという彼女がいました。この2人は3歳の頃からずっと一緒。
幼馴染という言葉が使われていますが、幼馴染という言葉を超えた、一心同体のような存在でした。
キズキくんが生きている時、ワタナベくんと直子さんと3人で出かけることもあったようです。

そしてキズキくんとの思い出が詰まった神戸を離れたい一心で上京したワタナベくん、電車に乗っていたら、偶然直子さんと再開します。運命ですね…

そしてそこから毎週末のお出かけが始まります。それはデートと言える程ではなく、ひたすらお散歩。会話したりしなかったり、お散歩という表現を出ない感じでした。

ある時、直子さんに好きな人はいるの?と聞かれたワタナベくん、好きな人はいないよ、と答えていました。

それは直子さんへの好きという感情が芽生える前ですね…


直子さん20歳の誕生日、ワタナベくんはケーキを持って直子さんの家にお祝いに行きます。
いつもはほとんど話さない直子さん、この日はお喋りが止まりません。
寮住まいで門限があるワタナベくん、帰ると言ってしばらくしたら…直子さんのお喋りは突然止まり、泣き崩れてしまいました。
そしてその後、初のベッドイン。
直子さん人生最初で最後の濡れた夜になりました。直子さんにとって、最も衝動的かつ人生をある意味変える1夜になり…。
3日後に転居してしまいます。

その後、療養施設へと移るのです。

直子さんとの一夜を共にし、突如失ってしまったワタナベくん。本書では心に穴が空いたような表現が使われていました。
直子さんを守る、直子さんと人生を歩みたい、そんな思いがワタナベくんにこみあげてきたように読めました。

◇◇◇

ワタナベくんは2度、直子さんに会いに、療養施設へと足を運んでいます。
そして、直子さんと同室のレイコさんと知り合います。

レイコさんも元々は直子さんと同じ療養を受けていた患者さん、今は療養施設での音楽の先生です。
ワタナベくんはレイコさんの過去を聞き、心のつながりを持ちました。

直子さんは改善の兆しを見せていましたが、突如として精神が乱れ…療養施設を離れ入院します。キッカケは、ワタナベくんが送った「一緒に暮らそう」という手紙ではないか、と思いました。
入院後回復が見られ、一度療養施設に帰ってきました。

そして、直子さんは大切に何度も読み返していたワタナベくんからの手紙を焼いてしまいます。おそらく、直子さんはワタナベくんとお別れする決意をしていたのでしょう。
その夜、直子さんは自殺し、キズキくんの元へと行ってしまいました。
直子さんは元々キズキくんの彼女だったので、自然といえば自然な流れだったのかもしれません。あまりにも残酷ですが…。

残されたワタナベくん、直子さんのお葬式に参列した時の直子さんの死を隠すような酷いお葬式にショックを受け、放浪の旅に出ます。

◇◇◇

これだけだとワタナベくんの純愛物語のようですが、実際はこの間、ワタナベくんの恋心は揺れ動いていました。

ワタナベくんの寮の先輩の永沢さんの趣味?がナンパ。ワタナベくんは永沢さんに気に入られ、誘われたらナンパに繰り出し女の子を抱きます。
ワタナベくんが抱く理由は、なんとなく抱きたい時があるから。つまり、誰でも良いというわけです。

その行為をやめさせたのが、直子さん。
直子さんに告白し、もうそういう行為はやめる、と宣言します。
そして、キッパリとナンパをやめたのです。
直子さんを思い出す方がナンパよりも心地よかった、というのもあります。
いずれにせよ、ワタナベくんの直子さんへの愛がより深くなった出来事でした…。

◇◇◇

なお女狩りが大好きだった永沢さんには、ハツミさんという彼女がいました。
永沢さんの女遊びを知っていながらも永沢さんのことが好きだったハツミさん。

永沢さんとハツミさんとワタナベくんの3人で出かけることもありました。
キズキくんと直子さんのカップルにワタナベくんも呼ばれたエピソードと重なりますね…

永沢さんの就職祝いのディナーで、永沢さんとハツミさんはケンカをします。
そしてハツミさんとワタナベくんが一緒に帰った時、ハツミさんはワタナベくんに、永沢さんとの関係を相談します。

ワタナベくんの答えは、
自分なら別れる。永沢さんは信じても普通の人のようには自分のところへは帰ってこない。
でした。

それがハツミさんとワタナベくんの最後の会話…。ハツミさんはほかの男と結婚し、その2年後に自殺しました。

ここまでなら普通の知り合いの会話ですが、ワタナベくんはハツミさんの死後数年が経ち、夕陽の光景を目にした時、ハツミさんを思い出します。
ハツミさんはワタナベくんが失ってしまった少年時代の心を揺り戻す人だと気づいたのです。
キズキくんの死で失った心の光を、ハツミさんは発していたのだと気づきました。

この時ワタナベくんは、ハツミさんは失ってはいけない存在だった、と強く認識します。
もちろん永沢さんもハツミさんを失った悲しさはありますが、ワタナベくんが感じた強烈な感情は別格でした。

◇◇◇

ワタナベくんが直子さんへの愛を膨らませていた頃、大学の授業で一緒だった小林緑に声をかけられ、アプローチをされます。

緑と会い始めた頃、緑には彼氏がいました。
ワタナベくんには直子さんがいました。
お互いパートナーがいると知りつつ会う回数を重ね、たまにケンカして会わない時期もあり…

緑は彼氏と別れ、ワタナベくんに告白します。
一方で直子さんへの気持ちも募っていたワタナベくんは苦悩します。そして、レイコさんに相談の手紙を書いたのです。

レイコさんは、
直子さんと緑の2人は、ワタナベくんの心の違う場所を揺らしている。だから、2人は比較できないと言いました。どちらを選んでも、空いた穴は完全にはふさげない。だからワタナベくんが決めなさい。
と速達で返してきました。

相手が1人では全部は埋められない。
一度につきあう彼女は1人。
この矛盾がわかっていながら、選択に迫られるワタナベくん。
その時に直子さんが自殺したのです。

◇◇◇

ワタナベくんの気持ち、今の自分にとてもよくわかる。感情移入してしまいました…
ワタナベくんは直子さんに惚れて、明るい未来を描いていた。
でも直子さんは自殺してしまった。
直子さんと向き合う前は、ナンパして女の子を抱いていたけど、そういうのをやめて、好きになっていた緑も抱かず、ひたすら真摯に直子さんの回復を待っていた。
待たされている緑の気持ちになると切ない。

現実では周りの人たちが自殺していくことはめったにないけれど、ワタナベくんとワタナベくんを取り巻く女の子達の感情の揺れ動きと苦しみは理解できました。

登場人物の皆が徐々に自己開示し、互いの理解を深めるにつれ、闇も見えてきました。
本当に自分を知ってほしい相手への自己開示の必要性を知りました。

読んでいて辛いけど心に沁みる小説でした。
深く人間関係を考えたいあなたにオススメです。